金融庁「第32回金融機能強化審査会 議事要旨 」を公表しました。

金融庁「第32回金融機能強化審査会 議事要旨 」を公表しました。

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English Summary

第32回金融機能強化審査会 議事要旨
1.日時:
令和6年9月2日(月曜)9時20分~12時30分
2.議題:
 実施計画(福井銀行・福邦銀行、荘内銀行・北都銀行)の審議
 経営強化計画(きらやか銀行・仙台銀行・じもとホールディングス)の審議
3.議事内容

 福井銀行の長谷川頭取、福邦銀行の湯浅頭取より、資金交付制度の活用申請に係る実施計画の概要について説明が行われた。主な質疑応答は以下のとおり。
地元の伝統的な中小企業に対して、どのように支援していくのか。
⇒ 福井銀行は第一地銀、福邦銀行は第二地銀で、取引先規模で一定の棲み分けがあった中、それぞれに十分サポートできていない企業層があった。今後は、地域まるごと支援として、業種・業歴・規模に限らず、事業性理解を徹底して、支援していきたい。

地域まるごと支援を行う上で一番の課題は何か。
⇒ 地域活性化が最も重要。資金需要を追いかける営業活動ではなく、資金需要を創出するような地域の活性化、例えば、交流人口の増加施策に金融機関自身が主体的に関与していくといったことに取り組むなど、需要の拡大に努めている。

事業性を理解した融資を行うには人材育成が必要と思うが、いかがか。
⇒ 研修体制は整えているが、もっとも、大事なのは、新しいことを勉強して、顧客のビジネスモデルを理解することにチャレンジしようという意識の変革であると考えている。事業性理解に係る取組も含め、顧客のために新しいことや難しいことにチャレンジして、職員が働き甲斐や成長を実感できるよう、組織全体を変えようとしているところ。

企業数が減る中で、資金利益が伸びていく根拠を聞かせてほしい。
⇒ 課題解決支援を含めた創業支援・第二創業支援に取り組むことに加え、北陸新幹線の延伸により観光立県化も見込まれる中、観光・宿泊産業や既存顧客の成長支援を行うことで資金需要を促していきたい。残高拡大目的ではなく、顧客の支援をしっかり行って、資金需要を促す結果として貸出金シェアを高めていきたい。

経営者の高齢化を踏まえれば、事業承継のサポートも重要と思われる。人材育成には時間がかかると思われるが、どのように取り組むか。
⇒ 10年前に設立したグループ会社の福井キャピタル&コンサルティングにおいて、事業承継やM&A支援ができる人材の育成に努めてきたが、ここ2年で更に部門を強化している。コンサルティング分野については中途採用も含め人材を増強している。また、プロパー職員は外部のトレーニーであったり実践を繰り返すことで鍛えていきたい。

資料に予防的引当という言葉があるが、金利ある世界に入っていく中で引当増加に係るリスクについて考えを聞きたい。
⇒ 引当増加については、両行の引当基準をあわせたことによるもの。今後は、事業者の資金需要を促し、中小企業向け融資の残高を伸ばしていきたいと考えており、それに伴う与信コストを計画的に見積もっている。

店舗統廃合に伴い、タンス預金が銀行預金として戻るためのチャネルが減ってしまうことにならないか。今後の預金戦略について考えを聞きたい。
⇒ 両行の店舗は同じ地域に存在していることから、利便性を損なわずに統合が可能な店舗は少なくないと考えている。  預金は、店舗が近くにあるから預けてくれるとは限らず、店舗以外のアプリ等のチャネルを複合的に設けることで、利便性を高めたい。  預金獲得については、これまで積極的ではなかった中、職員の預金に対する意識改革が重要。ネットバンクのような高い金利を付けて集めることが必ずしもプラスだとは考えておらず、短期的な目線ではなく、給与振込や年金受取の口座など、粘着性のある預金の獲得を目指したい。

 荘内銀行の松田頭取、北都銀行の伊藤頭取、フィデアホールディングスの新野社長より、資金交付制度の活用申請に係る実施計画の概要について説明が行われた。主な質疑応答は以下のとおり。
洋上風力発電の稼働までには、まだ時間がかかると思うが、稼働に向けた準備段階でどのように収益を得ようとしているのか。
⇒ 洋上風力発電は、成長戦略として北都銀行で積極的に取り組んでいる。2012年に風力発電事業者に融資して以来、知見を高めて人材育成を図ってきた。当初はプロジェクトファイナンス中心の取組だったが、今は、宿泊施設への設備資金の対応や、秋田県の事業者を巻き込んだ産業化の支援を進めている。ファイナンスのみならず、脱炭素に関するコンサルティングも含めて強化していきたい。

コンサルティング人材の育成は時間がかかると認識している。人材を他から調達した方が早いように思うが、どのように考えるか。
⇒ 確かに時間がかかるが、メガバンクや信託銀行の出身者を招聘して、職員に伴走してもらうことで育成に努めている。また、事業承継やM&Aに関して、外部へトレーニーとして派遣して、知見を高めている。苦労はしているが徐々に成果は出てきている。

洋上風力発電にかける思いは非常に伝わってきたが、その次に優先事項となるプロジェクト・産業についてはどう考えているのか。
⇒ DXも大きなポイントと認識。生産年齢人口が減少し、企業が人材確保に課題を抱える中、社内にDX室を立ち上げ、デジタル化による顧客企業の業務効率化支援を行っている。

洋上風力発電のほかに、人口を増やして活性化する方策について考えがあれば聞かせてほしい。
⇒ 直近だと、民間企業の社員寮を軸とした街づくりのプロジェクトについて、北都銀行が事務局として官民の連携を進めた。また、荘内銀行でも、駅前の商業施設跡地の再開発を主導して、地元の活性化に取り組んでいる。

システム費用の大きさについて、どのように捉えればよいか。
⇒ 経営統合以来、基幹システムはベンダーを一本化するよう進めてきたが、銀行単位のシステムを維持すると、これ以上のコスト削減は難しい。システムの一本化によるコストシナジーを前向きな投資に充てていきたい。費用については、今後システムの要件等を詰める中で、抑えられるよう交渉したい。

合併により、コスト削減の効果が出るのは理解できるが、トップラインのシナジー効果について教えてほしい。
⇒ 2009年の経営統合以来、持株会社により重複する機能の一本化を進めてきたが、まだ銀行単位の運営が残っている。今後、北都銀行のGX関連の業務について荘内銀行と一体運営できるようになり、また、荘内銀行の方が進んでいるコンサルティングの知見は、秋田県でも有用と考えている。本部機能のスリム化により創出される余剰人員を営業部門に回す予定である。

合併により規模が大きくなることで、今までと違う企業に貸出ができるようになる見込みはあるか。
⇒ 風力発電事業者に対する融資については、資本規制の対応もあり、既に一部を荘内銀行で引き受ける形としている。また、陸上風力発電の大型案件については、両行共同でアレンジをしており、二行体制ではリスクテイクの余力が足りない部分が出てきているので、合併により資金供給能力が増すことで地元企業への貢献が一層できるようになると考えている。

住宅ローンも収益には大きく影響するのではないかと思ったが、どのように考えているか。
⇒ 住宅ローンは、人口減少の中では過当競争的な側面があり、利鞘が小さい。これまでは、公的資金の返済を最優先にする観点から、金利を下げてまで住宅ローンには取り組んでおらず、事業性の貸出に取り組んできた。ただし、金利環境が正常化する中で、住宅ローンにも、これまで以上には取り組みたいと思っている。

 きらやか銀行の川越頭取、じもとホールディングスの鈴木社長より前経営強化計画の総括について、きらやか銀行の西塚取締役よりきらやか銀行の新経営強化計画の概要について、仙台銀行の坂爪頭取より仙台銀行の新経営強化計画の概要について説明が行われた。主な質疑応答は以下のとおり。
SBIグループとの連携について、今後の方針をどのように考えているのか。
⇒ 新しい時代の金融機関としてIT分野の取組が重要と考えたが、中規模以下の地域銀行単独での推進は困難と考え、連携を模索する中で、インターネットを媒介に急成長してきたSBIグループの対応が最も親身だったため連携を開始した。今後もIT分野を核として連携をしていきたい。それ以外に、半導体事業者がSBIホールディングスと共同で宮城県に建設する半導体工場についても、東北全体に経済効果を波及させられるよう連携していきたい。

粉飾決算を見抜けなかったのはなぜか。経営陣の率直な意見を聞きたい。
⇒ 財務諸表を基に経営者との対話はしていたが、在庫管理やグループ間取引を確認するといった、現場への踏込みや、上席者のサポートによる確認が足りていなかったと反省している。

今回の粉飾については、特定の職員の問題なのか、それとも組織的な問題なのか。他にも起こる懸念はないのか。
⇒ 粉飾事案については、昨年夏以降に粉飾が懸念される状況であったことを踏まえ、集中的に調査を行った。結果として、特定の担当者が原因ではなく、収益の積上げを優先するあまり、積極的に引当を積んだ上で抜本的な再生を行うといった対応ができていなかった。今後、新体制で改善を図る。  他に同様の事案がないかという点は、最大のポイントだと考えている。融資部・企業支援部の体制を強化し、また外部有識者の力も借りてリスクが相対的に高い先を個別に確認できる状態にしたほか、2024年3月期決算で多額の引当を実施したので、突発破綻等のリスクは相当程度減ったと認識している。

半導体工場の建設について、経済効果はきらやか銀行にも及ぶのか。
⇒ 規模感は熊本県にあるTSMC社の半導体工場と同程度であり、東北全体に半導体産業の集積が進むのではないかと考えている。製造業に強い山形県にもチャンスがあると考えている。

信用リスク抑制のための意識・行動改革に向けた職員との対話は、具体的に何を行うのか。
⇒ なぜ意識を変えないといけないのかという点について、職員が腹落ちして理解しないと今までと同じになる。個別の信用リスクの話ではなく、今変革が必要な理由について、そして銀行が変わるためにどうするのかといった対話を行う。

銀行の改革には、新規採用を含む人材確保が必要と考えるが、どのように考えているか。
⇒ 対外的には決算の黒字化を示すことで信頼確保を図ることが第一。その結果が出るまでは、経営陣も含めた現行員の行動を変え、例えば顧客訪問の中で「きらやか銀行の行員が変わった」ことを示していきたい。なお採用については、高校卒業者採用や中途採用も含めて積極的に対応していく。

2037年の公的資金返済に向けた見通しを聞かせてほしい。
⇒ 今回期限を延長させていただく200億円を利益剰余金の積上げのみで返済することは難しいと思っているが、コロナ特例による公的資本を除いた株主資本からの返済は可能と考えている。一方で、返済後の自己資本比率が十分な水準を維持できないため、新たな資本調達の必要性も認識しており、具体的な内容は今後よく検討していきたい。

 その後、以上の議事について討議が行われた。主な意見は以下のとおり。
(実施計画(福井銀行・福邦銀行))
福井県内の貸出金シェアが大きくなり、価格支配力は大きくなると思うので、当局でよくモニタリングしてほしい。

(実施計画(荘内銀行・北都銀行))
洋上風力発電が、どの程度収益に貢献するのかという点について、産業集積地がどこになるのかが非常に重要。
秋田県は人口減少が特に深刻だと思うので、それに抵抗する意味でGX分野に注力することには意義があると思うが、産業化が難しかった場合の二の矢が必要なのではないか。

(経営強化計画(きらやか銀行・仙台銀行・じもとホールディングス))
延長後の期限における返済可能性を高めるための具体策等を、より明確にしていく必要がある。
粉飾や不良債権に係る問題の再発防止のために厳しく取り組んでもらう必要がある。
職員の意識改革については、今後の新しい経営陣に期待をしたい。
金融庁においては、これらの意見も踏まえ、しっかりとしたフォローアップを実施してもらいたい。

 討議の結果、今回提出を受けた、実施計画(福井銀行・福邦銀行、荘内銀行・北都銀行)、震災特例に係る新たな経営強化計画(きらやか銀行・仙台銀行・じもとホールディングス)及びコロナ特例に係る変更後の経営強化計画(きらやか銀行・じもとホールディングス)について、審査会として了承することとされた。
※本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

お問い合わせ先

金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
監督局 銀行第二課(内線3536・3394)

https://www.fsa.go.jp/singi/soff/gijiyoshi/20240902.html

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