金融庁「三菱UFJモルガン・スタンレー証券、モルガン・スタンレーMUFG証券及び三菱UFJ銀行に対する行政処分等」を公表しました。

金融庁「三菱UFJモルガン・スタンレー証券、モルガン・スタンレーMUFG証券及び三菱UFJ銀行に対する行政処分等」を公表しました。

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令和6年6月24日
金融庁

三菱UFJモルガン・スタンレー証券、モルガン・スタンレーMUFG証券及び三菱UFJ銀行に対する行政処分等について
本日、三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社(東京都千代田区、法人番号4010001129098。以下、本文において「MUMSS」という。) 、モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社(東京都千代田区、法人番号2011001046046。以下、本文において「MSMS」という。)及び株式会社三菱UFJ銀行(東京都千代田区、法人番号5010001008846。以下、本文において「MUBK」という。)に対して、下記I.からⅢ.のとおり行政処分を行うとともに、MUBK及び株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ(東京都千代田区、法人番号4010001073486。以下、本文において「MUFG」という。)に対して、下記Ⅳ.のとおり報告を徴求した。
Ⅰ.三菱UFJモルガン・スタンレー証券に対する行政処分
1.処分の理由
MUMSSに対する証券取引等監視委員会による検査の結果、以下の法令違反等が認められたとして、令和6年6月14日、行政処分を求める勧告が行われた。
⑴ 銀証間における不適切な顧客情報の共有等
ア 銀証間における不適切な顧客情報の共有等
金融商品取引法第44条の3第1項第4号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第153条第1項第7号において、有価証券関連業を行う金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限る)は、当該金融商品取引業者又はその親法人等若しくは子法人等による非公開情報の提供について、あらかじめ発行者等の書面又は電磁的記録による同意がある場合等を除き、当該金融商品取引業者の親法人等若しくは子法人等と当該発行者等に関する非公開情報を受領又は提供してはならないとされている。
しかしながら、MUMSSの役職員は、親法人等であるMUBK、親法人等であるMSMSとの間において、法人顧客から情報共有を禁止されていること又は情報共有の同意を得ていないことを認識しながら、当該法人顧客に関する非公開情報の授受を少なくとも13回にわたって行い、これをMUMSS社内で共有していた。また、MUBKから受領した一部の非公開情報については、MUMSS代表取締役副社長(当時)自らが受領するとともに、当該非公開情報を利用して、引受契約の締結にかかる勧誘を行っている状況も認められた。
(主な事例1)
A社株式の売出しに関する非公開情報について、A社は役員自らが、MUBKに対し、MUMSS及びMSMSへの情報提供の禁止を再三伝達していた。しかしながら、MUMSS代表取締役副社長(当時)は、当該売出しの実行時期、金額、方法等に関する情報をMUBKから受領し、これを社内関係者に共有及び社内関係者からMSMSに提供しているほか、当該売出しにおける主幹事としてのポジションを獲得するため、当該非公開情報を利用して、営業戦略を企画し、引受契約の締結にかかる勧誘を行った。
(主な事例2)
B社が予定していた企業買収に際し、買収資金に係る融資契約の締結に向けた交渉過程において、MUBKがB社より伝えられた本件買収の実施予定に関する非公開情報について、MUMSS職員は、当該情報共有が法令違反行為であると知りながら、B社の意思に反し、MUBKから非公開情報を受領し、これをMUMSS代表取締役副社長(当時)も含めた社内関係者に共有及びMSMSに提供した。
イ 法人関係情報の管理態勢不備
金融商品取引法第40条第2号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第5号において、金融商品取引業者は、法人関係情報に係る不公正な取引の防止を図るために必要かつ適切な措置を講じなくてはならないとされている。
しかしながら、上記アのとおり、MUMSSの役職員は、MUBK及びMSMSとの間で不適切な法人関係情報の授受を少なくとも13回にわたって行っていた。
また、社内規程に基づく適切な管理を行わないなど、法人関係情報の不適切な管理も少なくとも16件認められた。

MUMSSにおける上記アの行為は、金融商品取引法第44条の3第1項第4号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第153条第1項第7号及び第8号に規定する行為に該当するものと認められる。

また、MUMSSにおける上記イのような状況は、金融商品取引法第40条第2号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第5号に該当するものと認められる。
上記ア、イの行為等は、MUMSS役職員が、銀証間で情報の授受を行ってはならないことを認識しながら、案件獲得というMUMSS、MUBK及びMSMSの利益を優先したものであり、MUMSS代表取締役副社長自らが非公開情報を受領している状況が認められるなど、銀証連携ビジネスの推進にあたり、MUMSSとして法令等遵守意識が希薄であることに起因するものであり、MUMSSにおいては法令等遵守態勢に不備があるものと認められる。
⑵ 登録金融機関による有価証券関連業の禁止を看過・助長したうえで不適切に金融商品取引契約を締結している状況
ア 登録金融機関による有価証券関連業の禁止を看過・助長したうえで不適切に金融商品取引契約を締結している状況
MUMSSは、前回検査において、MUMSSからMUBKに対して引受交渉を依頼し、MUBKが引受シェアの交渉を行ったともとれるような営業日報の記録が認められるなど、MUBKが法令上禁止されている有価証券関連業務を行うことを誘発しかねない状況が認められる旨の指摘を受けていた。この際、MUMSSは、MUMSS担当職員に対する聞き取りを中心とした事実関係の確認のみにとどまり、メール等の検証やMUBKに対する確認を行うことなく、単に誤解を招く記載であったなどと結論づけていた。この結論を前提に、社内に対して営業日報に不適切な記載を行わないよう注意喚起が行われ、MUBKが引受交渉を行っていた旨の事実関係が営業日報に記載されない状況となっていた。このような中、以下のような事実関係が確認された。
① MUMSS役職員は、少なくとも4回、MUBKが法令違反に該当し得る有価証券の引受けに係る交渉を行っている状況につき、MUBKから報告を受けるなどして把握していたにもかかわらず、MUMSSコンプライアンス部門に対して当該行為を報告・相談していないほか、MUBKの行員に対し、当該行為を止めるよう注意や警告をすることなく、この状況を看過・助長したうえで金融商品取引契約を締結した。
② MUMSS職員は、少なくとも3回にわたり、MUBKの行員に対し、引受交渉を要請するなど、MUMSS職員からMUBKに対して不適切な働きかけを行っていた。
③ MUMSS職員は、MUBKが本来行うことができない引受業務を行っていること、MUBKが所定の契約条件の融資を行う場合の最低条件としてMUMSSの引受シェアを引き上げてほしい旨の抱き合わせ勧誘を行っていること、及び、MUBKにより所定の契約条件の融資が行われていることを知りながら、顧客との間で引受契約を締結した。
イ 不適切な銀証連携を防止するための内部管理態勢が不十分な状況
MUMSSは、前回検査において、MUBKが法令上禁止されている有価証券関連業務を行うことを誘発しかねない状況及びモニタリングが不十分な状況であった旨の指摘を受けており、改善策として、不適切な銀証連携の防止などをテーマとした研修の実施やモニタリングの強化に取り組んでいた。
しかしながら、MUMSSコンプライアンス部署によるモニタリングが不十分であったことから、MUBKにおいて多数の法令違反行為が行われている状況を全く把握していなかったほか、MUBKによる法令違反行為が行われていた疑義のある事象少なくとも1件をモニタリングで検出していたにもかかわらず、グループ全体のコンプライアンスを担当する部署と連携し、必要な対応策を講じるなどの然るべき対応をすることを怠るなど、MUBKの法令違反行為を看過していた。
このようなMUMSSの対応状況は、不適切な銀証連携を防止するための内部管理態勢が不十分であったと認められる。
MUMSSにおける上記のような状況は、金融商品取引法第51条の「公益又は投資者保護のため必要かつ適当であると認めるとき」に該当するものと認められる。
また、上記行為ア③については、金融商品取引法第44条の3第1項第2号で禁止されている行為に該当する。
なお、上記のような状況は、MUMSS経営陣において、MUFGがグループ会社間の営業連携やこれに伴うグループ収益の拡大を掲げる中で、MUBKがグループ収益の確保に向けて、法令で禁止されている引受交渉等に自ら関与するリスクの認識が希薄であったことにより発生したものと認められる。
上記⑴⑵の行為は、グループ連携に係る適正な内部管理態勢を構築・運用する責務を負っている経営陣が、その責務に照らして求められるべき認識を持たず、上記の不適切行為の発生を未然に防止するために必要な内部管理態勢を構築していないなど、経営陣によるガバナンスが十分に発揮されていないことに起因するものであり、MUMSSにおいては、適切な業務運営を確保するための経営管理態勢に不備があるものと認められる。
2.命令の内容
 業務改善命令(金融商品取引法第51条)
⑴ 本件に関して、業務の健全かつ適切な運営を確保するため、以下を実施すること。
① 今回の処分を踏まえた経営陣を含む責任の所在の明確化を図ること。
② 本件に係る根本的な発生原因の分析に基づき、再発防止に向けて、以下の点を含む実効性のある業務改善計画を速やかに策定し、着実に実施すること。
・経営管理態勢並びに銀証連携等に係る法令等遵守態勢及び顧客情報管理態勢を含む内部管理態勢の強化
⑵ 上記⑴に係る実施状況及び業務改善計画を令和6年7月24日までに書面で報告すること。
⑶ 上記⑵の実施状況について、四半期末経過後15日以内を期限として、当面の間、報告すること。
Ⅱ.モルガン・スタンレーMUFG証券に対する行政処分
1.処分の理由
MSMSに対する証券取引等監視委員会による検査の結果、以下の法令違反が認められたとして、令和6年6月14日、行政処分を求める勧告が行われた。
 銀証間における不適切な顧客情報の共有等
ア 銀証間における不適切な顧客情報の共有等
金融商品取引法第44条の3第1項第4号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第153条第1項第7号において、有価証券関連業を行う金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限る)は、当該金融商品取引業者又はその親法人等若しくは子法人等による非公開情報の提供について、あらかじめ発行者等の書面又は電磁的記録による同意がある場合等を除き、当該金融商品取引業者の親法人等若しくは子法人等と当該発行者等に関する非公開情報を受領又は提供してはならないとされている。
しかしながら、MSMSの職員は、親法人等であるMUMSSとの間において、法人顧客から情報共有を禁止されていること又は情報共有の同意を得ていないことを認識しながら、当該法人顧客に関する非公開情報の受領を少なくとも3回にわたって行い、これをMSMS内で共有していた。また、MUMSSから受領した非公開情報を利用して引受契約の締結にかかる勧誘を行っている状況も認められた。
(主な事例1)
A社株式の売出しに関する非公開情報について、A社は役員自らが、MUBKに対し、MSMS及びMUMSSへの情報提供の禁止を再三伝達していた。しかしながら、MUBKの役職員は、当該情報提供が禁止されていることを認識していたにもかかわらず、MSMS及びMUMSSが当該売出しにおける主幹事としてのポジションを獲得するため、当該売出しの実行時期、金額、方法等に関する情報をMUMSSの役職員に提供し、さらにMSMS職員はMUMSSの職員からこれを受領した。このほか、当該売出しにおける主幹事としてのポジションを獲得するため、MSMSの職員及びMUMSSの役職員は当該非公開情報を利用して、営業戦略を企画し、引受契約の締結にかかる勧誘を行った。
(主な事例2)
B社が予定していた企業買収に際し、買収資金に係る融資契約の締結に向けた交渉過程において、MUBKがB社より伝えられた本件買収の実施予定に関する非公開情報について、当該情報共有が法令違反行為であると知りながら、B社の意思に反し、MUBKはMUMSSに当該非公開情報を提供し、MSMS職員はMUMSSからこれを受領した。
イ 法人関係情報の管理態勢不備
金融商品取引法第40条第2号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第5号において、金融商品取引業者は、法人関係情報に係る不公正な取引の防止を図るために必要かつ適切な措置を講じなくてはならないとされている。
しかしながら、上記アのとおり、MSMSの職員は、MUMSSとの間で不適切な法人関係情報の受領を少なくとも3回にわたって行っていた。
また、本来であれば、法人関係情報を認識した段階で登録手続などの適切な管理を行うべきところ、MSMSにおいては、幹事指名の内諾までは登録手続を行わないという不適切な取扱いが多く確認されているなど、法人関係情報の不適切な管理も少なくとも30件認められた。なお、30件の不適切管理のうち、登録が1月以上遅延している事例が11件認められている(最大遅延は9月以上)。
コンプライアンス部門は、職員の情報登録時の情報取得経緯等を確認する段階で、登録遅延及び登録漏れの疑いを認識し得たにもかかわらず、今回検査において登録遅延及びその疑いを指摘されるまで、いずれも検出できていない状況にあるなど、法人関係情報のモニタリング態勢に不備が認められた。
MSMSにおける上記アの行為は、金融商品取引法第44条の3第1項第4号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第153条第1項第7号及び第8号に規定する行為に該当するものと認められる。
また、MSMSにおける上記イのような状況は、金融商品取引法第40条第2号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第5号に該当するものと認められる。
上記ア、イの行為等は、MSMS職員が、親法人等から顧客の非公開情報の受領をしてはならないことを認識しながら、案件獲得というMSMS、MUBK及びMUMSSの利益を優先したものであり、銀証連携ビジネス等の推進にあたり、MSMSとして法令等遵守意識が希薄であることに起因するものであって、MSMSにおいては法令等遵守態勢に不備があるものと認められる。
また、経営陣において、日本の法令等の遵守のために必要かつ実効性の伴うモニタリング態勢や、法令等遵守意識の教育指導態勢など、顧客に関する非公開情報及び法人関係情報の取扱いに係る内部管理態勢を十分整備していないことに起因するものであり、MSMSにおいては、適切な業務運営を確保するための経営管理態勢に不備があるものと認められる。
2.命令の内容
 業務改善命令(金融商品取引法第51条)
⑴ 本件に関して、業務の健全かつ適切な運営を確保するため、以下を実施すること。
① 今回の処分を踏まえた経営陣を含む責任の所在の明確化を図ること。
② 本件に係る根本的な発生原因の分析に基づき、再発防止に向けて、以下の点を含む実効性のある業務改善計画を速やかに策定し、着実に実施すること。
・経営管理態勢並びに銀証連携等に係る法令等遵守態勢及び顧客情報管理態勢を含む内部管理態勢の強化
⑵ 上記⑴に係る実施状況及び業務改善計画を令和6年7月24日までに書面で報告すること。
⑶ 上記⑵の実施状況について、四半期末経過後15日以内を期限として、当面の間、報告すること。
Ⅲ.三菱UFJ銀行に対する行政処分
1.処分の理由
MUBKに対する証券取引等監視委員会による検査の結果、以下の法令違反等が認められたとして、令和6年6月14日、行政処分を求める勧告が行われた。
⑴ 銀証間における不適切な顧客情報の共有等
ア 銀証間における不適切な顧客情報の共有等
金融商品取引法第44条の3第1項第4号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第153条第1項第7号において、有価証券関連業を行う金融商品取引業者(第一種金融商品取引業を行う者に限る)は、当該金融商品取引業者又はその親法人等若しくは子法人等による非公開情報の提供について、あらかじめ発行者等の書面又は電磁的記録による同意がある場合等を除き、当該金融商品取引業者の親法人等若しくは子法人等と当該発行者等に関する非公開情報を受領又は提供してはならないとされている。
しかしながら、MUBKの役職員は、親法人等であるMUMSSとの間において、法人顧客から情報共有を禁止されていること又は情報共有の同意を得ていないことを認識しながら、当該法人顧客に関する非公開情報の授受を少なくとも10回にわたって行っていた。なお、一部の非公開情報の提供に関しては、MUBK専務執行役員(当時)自らも提供している状況も認められた。
(主な事例1)
A社株式の売出しに関する非公開情報について、A社は役員自らが、MUBKに対し、MUMSS及びMSMSの2社(以下、当該2社を総称して「系列証券会社」という。)への情報提供の禁止を再三伝達していた。しかしながら、MUBK専務執行役員(当時)は、当該情報提供が禁止されていることを認識していたにもかかわらず、系列証券会社が当該売出しにおける主幹事としてのポジションを獲得するため、当該売出しの実行時期、金額、方法等に関する情報をMUMSSに提供した。
MUBK代表取締役(当時)は、不適切な情報提供が行われている可能性があることを認識したものの、当該専務執行役員からA社役員との間で事実上の黙認が成立している旨の報告を受け、違法性のある行為ではなかったと誤認したとしている。そのため、当該専務執行役員に対してそれ以上の詳細な事実関係の確認を行っておらず、内部管理統括責任者をはじめとしたコンプライアンス部署に一切の連絡を行わないなど、特段の対応を指示しなかった。このため、MUBKは、本件について適切な是正措置を講じていなかった。
なお、当該専務執行役員とA社役員との間で、実際は、黙認が成立していなかった。
(主な事例2)
B社が予定していた企業買収に際し、買収資金に係る融資契約の締結に向けた交渉過程でB社より伝えられた本件買収の実施予定に関する非公開情報について、MUBK行員は、B社から本件買収にかかる秘密保持契約の取り交わしを求められ、秘密保持契約を交わしたにもかかわらず、B社の意思に反し、MUMSSに非公開情報を提供した。
イ 法人関係情報の管理態勢不備等
金融商品取引法第40条第2号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第5号において、登録金融機関は、法人関係情報に係る不公正な取引の防止を図るために必要かつ適切な措置を講じなくてはならないとされている。
しかしながら、上記アのとおり、MUBKの役職員は、MUMSSとの間で不適切な法人関係情報の授受を少なくとも10回にわたって行っていた。
また、社内規程に基づく適切な管理を行わないなど、法人関係情報の不適切な管理も少なくとも11件認められた。
このほか、MUBK行員は配偶者名義で開設した証券口座を利用し、平成30年7月から令和5年11月までの間、専ら投機的利益の追求を目的として、勤務時間中の発注を含め、主に信用取引により短期間での同一銘柄反対売買を行う手法により、自己の計算に基づく有価証券の売買を多数回(約5000回、約20億円)にわたり行っており、このうち少なくとも4銘柄の売買については、職務上知り得た法人関係情報に基づく不適切な有価証券の売買であった。なお、当該行員が所属していた部署は、法人関係情報を用いて業務を行う部署ではあるものの、Need to Know原則(顧客等に関する情報へのアクセス及びその利用は業務遂行上の必要性のある役職員に限定されるべきという原則)に反し、本来、法人関係情報を知る必要のない行員に対しても法人関係情報が広く伝達されている状況にあった。
MUBKにおける上記のような状況は、金融商品取引法第40条第2号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第123条第1項第5号に該当するものと認められる。また、MUBK行員における専ら投機的利益の追求を目的とした有価証券の売買は、金融商品取引法第38条第9号に基づく金融商品取引業等に関する内閣府令第117条第1項第12号に該当するものと認められる。
上記ア、イの行為等は、MUBK役職員が、銀証間で情報の授受を行ってはならないことを認識しながら、案件獲得というMUBK及び系列証券会社の利益を優先したものであり、MUBK専務執行役員自らが非公開情報を提供している状況及びMUBK代表取締役も不適切な情報提供があった可能性を認識している状況が認められるなど、銀証連携ビジネスの推進にあたり、MUBKとして法令等遵守意識が希薄であることに起因するものであり、MUBKにおいては法令等遵守態勢に不備があるものと認められる。
⑵ 登録金融機関による有価証券関連業の禁止
金融商品取引法第33条第1項において、登録金融機関は有価証券の引受業務などの有価証券関連業を行ってはならないとされている。
しかしながら、MUBKは、有価証券の引受等に関し、上場会社等に対して、系列証券会社を引受先や割当先とするよう交渉及び勧誘する行為を少なくとも28回にわたって行った。当該行為は、本検査での指摘を受けるまで多数の部署において広く継続的に行われていた。
なお、上記不適切勧誘の一部に関しては、MUBKの営業部店からMUBK代表取締役(当時)に対して、MUBK関与によりMUMSSの案件獲得に至った旨の報告がなされており、当該代表取締役においても不適切な勧誘行為が行われていることを認識している状況も認められた。
MUFGは平成30年に策定した中期経営計画において、グループ収益の最大化を目指す施策を打ち立てており、その一環として、MUBKの収益目標についても、従来のグループ連携収益と銀行収益の2本柱の目標から銀行収益を含むグループ収益に1本化されている。このため、行員の業績評価においても、MUMSSに対して顧客ニーズの連携(案件紹介)を行い、系列証券会社で成約に至り収益計上された利益金額が、MUBKの行員の営業実績にも反映される仕組みとなっていた。
このような状況のもと、MUBKの多数の部署において不適切勧誘が行われることとなり、一部営業店の行員においては、銀行収益と系列証券会社収益を比較して、系列証券会社収益の方が大きい場合には系列証券会社の契約を獲得する方が収益目標額との関係でも利点が多いと考えたうえで行動している状況も確認された。
(主な事例1)
C社の社債発行に関し、MUMSSの提案内容が他社に劣後している状況を把握したMUBKは、C社に対して、MUMSSの引受シェアが全くないと厳しいため、MUFGとしてMUMSSを主幹事とし、引受シェアを与えてもらえるよう交渉を繰り返し行った。しかしながら、C社からMUMSSに引受シェアを与えない方針があらためて伝えられたことから、MUBKは、同時期にMUBKとC社の間で折衝していた融資条件から金利スプレッドの引下げ、弁護士費用及び担保を免除する一方、MUMSSの引受シェアを得られるよう交渉を行った。その結果、MUMSSは幹事に指名され引受シェアを得られることとなった。
このほか、MUBKはC社に関する別の社債発行に際しても同様の交渉を行い、MUMSSが主幹事に指名されているが、その際、MUBKの営業部店からMUBK代表取締役(当時)に対して、MUBKが何度もC社に対してMUMSSの引受交渉に関与した結果がMUMSSの契約に結びついた旨の報告がなされていた。
(主な事例2)
MUBKはD社から期間10年の融資要望を受けていた。同時期に予定されていたD社の公募増資に関し、MUBKの関連部署間において、期間10年で融資する取組意義は証券取引の拡大である旨の議論が行われた結果、MUBKはD社に対して、期間10年の融資をする条件として系列証券会社の引受シェアを引き上げてほしい旨の抱き合わせ勧誘を行った
D社が、MUBKに引受シェアを引き上げなかった場合、今後のMUBKとの融資に影響が生じるのではないかと危惧している旨の懸念を伝えると、MUBKは、仮に系列証券会社の引受シェアの引き上げがない場合、貸出金額の変更こそしないが、貸出期間については短縮する意向である旨を伝達した。
MUBKにおける上記行為は、登録金融機関による有価証券関連業を禁止する金融商品取引法第33条第1項に違反するものと認められる。
なお、上記のような状況は、MUBK経営陣において、MUFGがグループ会社間の営業連携やこれに伴うグループ収益の拡大を掲げる中で、MUBK行員がグループ収益の確保に向けて、法令で禁止されている引受交渉等に自ら関与するリスクの認識が希薄であったことにより発生したものと認められる。
上記⑴⑵の行為は、グループ連携に係る適正な内部管理態勢を構築・運用する責務を負っている経営陣が、その責務に照らして求められるべき認識を持たず、上記の不適切行為の発生を未然に防止するために必要な内部管理態勢を構築していないなど、経営陣によるガバナンスが十分に発揮されていないことに起因するものであり、MUBKにおいては、適切な業務運営を確保するための経営管理態勢に不備があるものと認められる。
2.命令の内容
 業務改善命令(金融商品取引法第51条の2)
⑴ 本件に関して、業務の健全かつ適切な運営を確保するため、以下を実施すること。
① 今回の処分を踏まえた経営陣を含む責任の所在の明確化を図ること。
② 本件に係る根本的な発生原因の分析に基づき、再発防止に向けて、以下の点を含む実効性のある業務改善計画を速やかに策定し、着実に実施すること。
・経営管理態勢並びに銀証連携に係る法令等遵守態勢及び顧客情報管理態勢を含む内部管理態勢の強化
⑵ 上記⑴に係る実施状況及び業務改善計画を令和6年7月24日までに書面で報告すること。
⑶ 上記⑵の実施状況について、四半期末経過後15日以内を期限として、当面の間、報告すること。  
Ⅳ.三菱UFJ銀行及び三菱UFJフィナンシャル・グループに対する報告徴求
MUBK及びMUFGに対する金融庁検査において、経営管理態勢並びに内部管理態勢が不十分であることが確認されたことから、本日、銀行法に基づき、以下の事項について報告するよう求めた。
1.MUBKに対する報告徴求(銀行法第24条第1項)
⑴ 報告事項
① 銀行法第12条に規定する他業禁止及び同法第12条の2第2項に規定する顧客情報管理措置に関して認められた事案の事実認識、発生原因の分析(背景となる真因の分析を含む)、並びに当該分析を踏まえた問題認識
② ①を踏まえた、以下の点を含む再発防止に向けた実効性のある改善対応策(改善対応策の実施計画と実施状況等を含む。)
・経営管理態勢並びに銀証連携に係る法令等遵守態勢及び顧客情報管理態勢を含む内部管理態勢の強化
⑵ 報告期限
① 上記⑴に係る報告を令和6年7月24日までに報告すること。
② 上記⑵①の実施状況について、四半期末経過後15日以内を期限として、当面の間、報告すること。  
2. MUFGに対する報告徴求(銀行法第52条の31第1項)
⑴ 報告事項
① 子会社であるMUBKにおいて認められた、銀行法第12条に規定する他業禁止及び同法第12条の2第2項に規定する顧客情報管理措置に関する事案を踏まえ、銀行持株会社としての発生原因の分析(背景となる真因の分析を含む)、及び当該分析を踏まえた問題認識
② 今回の事案を踏まえた、グループとしての再発防止に向けた以下の点を含む実効性のある改善対応策(改善対応策の実施計画と実施状況等を含む)
・経営管理態勢並びに銀証連携に係る法令等遵守態勢及び顧客情報管理態勢を含む内部管理態勢の強化
⑵ 報告期限
① 上記⑴に係る報告を令和6年7月24日までに報告すること。
② 上記⑵①の実施状況について、四半期末経過後15日以内を期限として、当面の間、報告すること。
お問い合わせ先

金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
監督局 証券課(内線2368、5471)    大手証券等モニタリング室(内線2929、2835)    銀行第1課(内線3765、3388)

https://www.fsa.go.jp/news/r5/shouken/20240624-2/20240624.html

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