金融庁「日本IFIARネットワーク第7回総会議事次第・議事要旨の公表」を公表しました。

金融庁「日本IFIARネットワーク第7回総会議事次第・議事要旨の公表」を公表しました。

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日本IFIARネットワーク第7回総会議事次第・議事要旨

日時:令和5年6月5日(月曜)14時00分~16時00分
開催方法:対面会議(金融庁内会議室、一部オンライン会議)

1.開会
2.報告    ・IFIARからの最近の活動報告(IFIAR事務局)    ・監査に関する国際動向(公認会計士・監査審査会事務局)    ・最近の企業開示・監査をめぐる動向(金融庁)    ・ネットワーク会員からの報告
3.ディスカッション
4.閉会
議事要旨
3.ディスカッションに関し、今回取り上げた各共通テーマ((1)KAMの導入・定着が高品質な監査の実現に寄与したか、(2)ESG 報告及びそれに対する保証、(3)監査におけるテクノロジーの活用)に関する参加者の主な発言は以下のとおり(事務局の発言は●)。
テーマ(1)KAMの導入・定着が高品質な監査の実現に寄与したか

◯ KAMの選定プロセスにおける外部監査人のコミュニケーションの相手方である監査役等の視点に関して、日本監査役協会が2021年12月に公表した「監査上の主要な検討事項(KAM)の強制適用初年度における検討プロセスに対する監査役等の関与について」に基づき、以下の点を共有。

【年間の検討プロセスを通じての状況】

KAM(候補)の個数の変遷:半数強の会社が期初(監査契約締結~監査計画策定)段階に提示を受けたと回答。個数に変化があったのは、3月末が最多で、期初の候補から絞込みが行われている傾向。
ドラフトの提示・アップデート時期:監査計画策定段階までに提示があった会社が30.4%、3Qまでが全体の約7割。ドラフトのアップデート回数は1回が最多(30.0%)、0~3回の合計で85. 6%。アップデートのタイミングは、四半期レビュー時が最多(57.6%)。早期段階でのドラフトの入手によるメリットは、記載内容と開示情報との関係を含む前広な議論が可能になる点。

【時系列順の各社の状況】

監査計画策定段階:導入以前と比較して監査人とのコミュニケーションの質的又は量的変化があったとしたのは3分の2程度で、変化がなかったという回答も以前から十分コミュニケーションをとってきたといった理由によるものが多い。KAM 候補の選定に関する議論では、記載表現において見解相違/要調整事項があったとの回答が17.1%。
期中:期中におけるKAM候補項目の変更について、ほぼ半数の会社にて、何らかの見直し(追加、削除、その他変更)が行われ、なかでも、項目の削除が行われたケースが多い(34.9%)。
期末(監査報告書作成段階):議論において対象となった項目は、KAMの内容(76.2%)、選定理由(60.7%)などが多い。
開示:監査役等の監査報告書では、言及した(10.3%)/言及しなかった(89.7%)。有価証券報告書における「監査役会の活動状況」では、言及した(18.6%)/言及しなかった(81.4%)。有価証券報告書における「監査役会の活動状況」の項において監査役等のKAM検討プロセスへの対応について言及することは、意味があるのではないか。

【導入の効果】

監査役等の立場から見た導入に対する実感:監査役等、監査人、執行側相互のコミュニケーションが活発化し、監査品質が向上したとの回答が最多(57.0%)。

◯ 今後の展望(検証事項)として、KAMが投資家等の利用者の期待(内容・個数など)に応えるものになっているか、記載の固定化についてどのように考えるか、開示の充実⇒対話の促進⇒監査品質の向上に向けた好循環が生まれているか、などを考えている。
 

◯ 投資家等の視点に関して、KAMと情報開示、建設的な対話をうまく連動させ向上させていくことが課題であると感じている。また、会計不正が起きると企業価値が大きく棄損され、投資家にとっても投資対象の価値が下がるといった問題意識もある。
◯ 2021年3月期以降のKAMについて、日本証券アナリスト協会が日本公認会計士協会の協力を得て、証券アナリストに役立つKAMの好事例集を公表した(2022年(2021年3月期)、2023年(2022年3月期))。2022年は優良KAM23社+特別枠3社、2023年は優良KAM27社+特別枠1社を選定している。証券アナリストにとってのKAMの利用価値として、(1)監査の品質やガバナンスについて一定の判断材料が得られること、(2)会社のリスクをより良く理解できること、(3)会計上の見積り等について、証券アナリストとは別の観点でチェックした監査人から、重要な参考意見が得られること、が挙げられている。
◯ KAMの活用は、証券アナリスト・投資家では全般的にはまだそれほど進んでいない印象。証券アナリスト・投資家の関心領域に近いKAMの好事例も出てきており、そうした事例では、利用者の視点を踏まえた進捗が感じられるが、上場会社約3,800社の中で好事例二十数社というのはあまりにも少ない。
◯ 企業と投資家との対話のテーマの一つは、中長期的な企業価値向上。そのテーマに即す内容にKAMがなることや、KAMが有価証券報告書のほか、統合報告書や投資家向け説明会等の資料にも記載されるなど対話でKAMを使うことやその後押しも重要ではないか。
◯ 「リスク」が注目される局面や「コーポレートガバナンス」が重視される場面を中心に、KAMの活用を進めていけばよいのではないか。
◯ 「リスク」が注目される局面は増えている。企業は従来以上に環境問題対応などを意識した投資やM&Aを積極化したり、そのために資金を調達したりという戦略をとっている。証券アナリスト・投資家はそれを評価する一方、リスクも懸念している。企業経営者も、戦略実行局面における課題対応は意識している。その中でKAMを活用し、戦略の妥当性や調整を議論する可能性もあるのではないか。また、「コーポレートガバナンス」が重視される場面では、監査の品質も注目される。KAMと併せて監査人の交代や報酬などの情報も活用できるのではないか。
◯ そうした取組を含め、今後、監査人が証券アナリスト・投資家の視点を踏まえ、分かりやすいKAMを作成すること、証券アナリスト・投資家はKAMの位置づけを踏まえて分析や対話に活用すること、企業はリスクの把握と対応を適切に情報開示することが従来以上に期待される。  

◯ 企業側では、(国際会計基準を適用する会社が多くない)日本におけるKAM導入の副次的な効果として、監査人の側から監査役と執行部とのコミュニケーションが拡充した結果、注記が充実し、注記を基にしたKAMも充実した。これは、監査品質ではなく、開示の問題。
◯ 監査役等とのコミュニケーションは確実に向上した。KAMは、金融商品取引法監査が適用される会社に対して本適用され、監査報告書への記載が求められているが、会社法監査では求められていない。それにもかかわらず、日本監査役協会の調査によると、監査役等の監査報告書での報告が10.3%、有価証券報告書における「監査役会の活動状況」での言及が18.6%。会社法監査へのKAMの導入に向け、心ある対応をしている監査役もいると理解。英国では、監査委員会のコメントが年次報告書に記載されている。KAMに対して監査役等がどのように対応しどのように判断したかという情報は重要。
◯ 機関投資家は、KAMを使って自らの意思決定を改善したいとの期待を持っているはず。現状のKAMでは、投資家、利用者にとって意思決定により有用な情報が提供されたとは言えないと思う。英国やブラジルで提言されたような、会計上の見積りをどう判断し監査手続きを実施したかといったfindingsを監査報告書に書くべきだと思う。
◯ 例えば、KAMにおいて企業の見積りが“楽観的”といったような記載が入るのであれば、投資家がこれを踏まえ、分析に当たって企業の算出した金額を合理的な範囲で厳しめに見直すこと(逆に“保守的”という評価であれば、企業の算出した金額をそのまま利用しようと判断すること)ができるため、意思決定に有用であると考えている。記載する側が利用者側の立場に立って記載することが重要。  
◯ 「KAMの特徴的な事例と記載のポイント2022」11頁の、アナリストの約64%がKAMを読んだことがないという調査は、衝撃的。アナリストにとって、過去情報への関心が会計士より薄いことは分かる。監査における過去情報の洗い出しから、どう中長期的な価値、将来情報につなげていけるかが課題。現状はファースト・ステップであり、関係者と協力して好事例の分析等を続けていきたい。
◯ 日本公認会計士協会による監査基準報告書701研究文書第2号「「監査上の主要な検討事項」の事例分析(2021年4月~2022年3月期)レポート(研究文書)」によると、2021年4月から2022年3月までで、KAMの1社当たりの平均個数は1.27個から1.29個にとどまったものの、平均文字数については1,218文字から1,248文字になった。監査人は間違いなく努力はしているが、利用者側の立場を一層考慮することも重要。
◯ ボイラープレート化に対しては、例えば、KAMを変える場合になぜ変えるかの情報を追加的に出したり、KAMの中でどれだけ高度な監査アプローチをしたか(例:データアナリティクスの手法を活用、循環取引について先進的なアプローチを活用)といった監査品質に直結する工夫を書いたりする努力は続けている。
◯ 監査役等とのコミュニケーションに関しては、監査基準報告書260で、KAMに至る前の段階でも監査リスクを共有することなどに取り組んできた。
◯ 監査報告書の透明化は一歩進んだが、まだまだこれから進化させるべきという観点を共有する。
◯ 自主規制としては、KAMの選定や、KAMに記載された監査手続がしっかりと行われているか等について品質管理レビューを通じて見ていくことが協会の重要な役割と認識。  

◯ KAMは二極化傾向にある。一方では、経営環境の変化やビジネスモデルの特色など企業固有の記述があり、それに対する監査手続が丁寧に記載されているものがある。他方、項目も記述も前年度とほぼ同じ文言で、かつどの会社でも通用するような一般的な記述で、分量も前者の半分もないような例もある。ボイラープレート化は最大の問題と感じており、KAMの個数がそもそも1個しかなければ、同じ企業の前年度との関係や同業他社等他の企業との関係でボイラープレート化しやすい面もあるのではないか。
◯ 証券アナリストの35.9%しかKAMを読んだことがないというのは望ましくないが、上場企業は約3,800社あり、証券アナリストがフォローできる会社はさほど多くない。日頃見ている会社の場合には、KAMに記載されている事項はすでに分かっている面がある一方、アナリストが普段フォローしていない会社については、まずKAMを見て非常に参考になっている面がある。いろいろと課題があると認識しているが、引き続き関係者と協力して証券アナリストへのKAMの周知・定着に努めたい。KAMの品質の向上のための取組もお願いしたい。
 

◯ KAMの発行体の意識がどうすれば高まるのか、各国でどうしているのか、に関心がある。フィードバックをいただけるとありがたい。  

テーマ(2)ESG 報告及びそれに対する保証

◯ ESG報告及びその保証については、国際的な基準の策定が急ピッチで進んでおり、非常にチャレンジングだと感じる。市場関係者の間では、サステナブル投資、サステナブルファイナンスが最重要課題の1つ。莫大なトランジション・ファイナンスの需要にマーケットがどうこたえていけるか、信頼性をどう確保していけるかが課題と捉える人が多い。
◯ その中で、証券業界でも「サステナビリティ基準ワーキング・グループ」を設置し、必要に応じコメントレターを取りまとめるなど、重要との認識で相応にリソースを割いて対応している。
◯ 保証の議論については、いくつかの観点から大きなチャレンジがある。第一に、検討のテンポが過去の例に比べて非常に速く、本年公開草案を出して来年最終化というのは突貫工事のようなもので、ステークホルダーにしっかり理解してもらうのが難しい。第二に、職業にとらわれない(profession-agnostic)基準開発となっており、通常の監査マターに比べ、保証を行う関係者がより多様化している。
◯ 次のフェーズへの移行を少しでも円滑に進めるには、官民のステークホルダーがそれぞれの持ち場で、前広に幅広くアウトリーチに尽力していくことが不可欠。証券業界としても、アウトリーチや専門人材の育成を含めできることをやりたいし、関係者・IFIARでもアウトリーチ活動にリーダーシップを発揮していただきたい。
 

◯ 証券アナリストがESG報告で重視するポイントは、財務情報とのコネクティビティ。開示のための開示でなく、戦略によって財務情報とのコネクティビティを示していただくこと、戦略の中身が重要。日本企業の課題は、人口減少・高齢化により国内市場で稼げなくなっていることと、デジタル敗戦であるとよく言われるが、これらの課題を克服するため、人的資本を成長のドライバーとしてどのように位置付けて、海外市場との関係やデジタル人材をどう強化していくのかなど、具体的な戦略を示して財務情報へ結び付けていっていただければと考える。
 

◯ 財務報告とのコネクティビティが重要との認識は同意見である。IAASB(国際監査・保証基準審議会)による国際サステナビリティ基準ISSA5000(International Standard on Sustainability Assurance 5000)の公開草案がこの夏に公表される予定。サステナビリティ保証業務は、監査法人・公認会計士に限定されない。財務報告とのコネクティビティの観点では会計士が近い立場にあるが、どういう形でサステナビリティ保証を進めていくかは重要な観点。サステナビリティ保証に関して、公認会計士にどのような役割を期待するのかについて、是非、皆様からのご意見をお寄せ頂きたい。
 

◯ ESG/サステナビリティ情報の開示と保証は2段階で進んでいると思うが、一体で進めることが重要。2004年に金融庁が「ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けた対応」で全開示企業に対して開示内容の自主点検を要請した際、訂正報告を提出した会社は約15%であり、総訂正件数のうち「経理の状況」の訂正が約25%で、残りの約75%は「経理の状況」以外の訂正だった。ここから類推すると、有価証券報告書でサステナビリティ関連情報の記載が求められる場合にも、全体の約15%は訂正報告が必要な内容となるのではないか。法定開示で信頼性のない情報がマーケットに出るのは避けなければならないという観点からは、これに対応する必要を含んでおく必要がある。
◯ ISSA5000における保証の主体は、職業にとらわれない(profession-agnostic)ということで会計士に限定されない。IESBA(国際会計士倫理基準審議会)コードは会計士のみに強制できるものであり、その他の専門家が有価証券報告書のサステナビリティ情報に保証を提供する場合に、どのような欠格要件を求めるかは非常に重要な論点。保証の対象については、日本ではTCFDに賛同する会社が多いので、財務情報に関連するサステナビリティ情報の開示はしたい会社が多いと理解しているが、会計上の見積りまでいくもの・いかないもの、財務情報に近いエリアから遠いエリアまであると認識している。保証の対象に対して財務諸表監査と同じレベルの保証の水準を求めるのか、保証可能性が低い情報なので予め当局が財務諸表監査と同じレベルの保証は求めないとするのか、予め検討しておく必要がある。
 

● どのような規制にするかは非常に重要であって、IAASB・IESBAの基準を踏まえ具体的にどうするかは各国規制当局で枠組みを作る必要があり、タイミングも重要。
● 保証をどう扱うか以前に、サステナビリティ保証関連基準に関して、IAASBやIESBAから公開草案の市中協議が予定されている。保証関連基準は、会計基準に比べ、従来から、パブリックコメントを提出する主体の範囲が非常に狭いのが通常。多くの多様な意見が出ることにより、基準がしっかり使えるものになると思うので、公開草案が出たとき、それぞれの立場から、例えばユーザーの立場で、どのような保証手続きに基づくものであれば信頼して使えるかといった観点から積極的にコメントをいただけると幸い。
 

◯ 公認会計士以外の保証業務を提供する者の監督なり資格を求めるかどうか等、国際的にどうしていくのかといった状況についてもフィードバックをいただけるとありがたい。
 
テーマ(3)監査におけるテクノロジーの活用

◯ テクノロジーの監査業務への導入を考えた場合に、様々なシステムやツールがあるが、「使うこと」と「使いこなせること」は同じではない。例えば、異常な仕訳や売掛金の残高の異常値などが自動的に検出されたとしても、背後のビジネスフローを理解していないことなどによってその理由を推測できなければ困る。仮にクライアントから会計方針を変えたことによるものという説明を受けたとしても、なぜ会計方針を変えたかまで考えて質問することが重要。会計士の仕事は想像力が要求されるから面白いものであるし、監査の教育も重要。
 

◯ DXの推進は、公認会計士の新たな資質・能力として求められる。継続的専門研修については、能力開発に重きを置いた研修により、必要な資質を備えた監査人をしっかりと育てていきたい。
◯ 監査にテクノロジー、データアナリティクスを活用する前段階として、標準化が必要。国際標準化機構(ISO)からISO 21378 Audit Data Collectionが公表され、監査データの標準化が提唱されている。大手監査法人ではデータアナリティクス等の先進的な取組も進めているところであり、監査データの標準化の普及・推進の取組が必要。
◯ 監査法人のガバナンス・コードの指針2-2でも、IT 基盤の実装化に係る検討・整備が記載されている。中小監査法人でもITへの対応が重要な課題になってきている。日本公認会計士協会では、業務支援部門において、上場会社を監査する中小監査事務所を中心とした中小事務所への支援・育成も引き続き行っていく。
◯ 準大手監査法人では、IT資源を共同で使うITのプラットフォームを準大手監査法人の中で共同化・共有化しようという動きもある。
◯ 大手から中小までしっかりした監査を行うために協会はサポートをしていく。  
◯ テクノロジーに関しては、監査人側のテクノロジーの導入が注目を浴びるが、財務諸表の作成から監査まで一連の流れであるので、企業サイドでのテクノロジーもセットで考えないとうまくワークしていかない。企業サイドの中でも、経理部門は比較的早くテクノロジーが導入されやすいが、もっと入口のデータを入力するところから、テクノロジーを活用して業務自体も効率的かつ精度が高まるような運用も重要。他国でどう対応しているのかもフィードバックいただけるとありがたい。
 

● 現在認識している限りでは、各国では、上場企業やPIE(社会的影響度の高い事業体)といった先が対象となるが、日本と比べると比較的選ばれた少数のマーケットを見ている。その中で監査対象先がテクノロジーを導入できているかと聞くと、比較的できているという回答になる。日本では上場企業の裾野が広いため、テクノロジーを導入できているところとできていないところの開きがある。
● 監査人側でテクノロジー活用の準備を進めていても、データがうまく活用できる状態になっておらず、昔ながらのやり方をしているという例もある。各国と比べ所与の状況が違う面もあるが、発行体を含め、テクノロジーを活用し、効率的な経営、中長期的な成長につなげていくことが重要。

以上

お問い合わせ先

総合政策局IFIAR戦略企画本部IFIAR戦略企画室
03-3506-6000(代表)(内線2435)

https://www.fsa.go.jp/ifiar/20230705.html

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