金融庁「エヌエヌ生命保険株式会社に対する行政処分」を公表しました。

金融庁「エヌエヌ生命保険株式会社に対する行政処分」を公表しました。

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令和5年2月17日 金融庁
エヌエヌ生命保険株式会社に対する行政処分について
金融庁は、本日、エヌエヌ生命保険株式会社(本店:東京都渋谷区、法人番号8010001009338、以下、「当社」という。)に対し、下記のとおり業務改善命令を発出した。

1.業務改善命令の内容   保険業法第132条第1項に基づく命令(業務改善命令)
(1)業務の健全かつ適切な運営を確保するため、以下を実施すること。
① 経営体制の見直しを含む経営管理(ガバナンス)態勢の抜本的な強化
(今回の処分を踏まえた経営管理(ガバナンス)上の問題点に関する経営姿勢の明確化、及び今後のビジネスモデルのあり方に係る検討を含め、下記②~⑤を着実に実行するために必要となる態勢の整備・構築)
② 保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動による契約の特定、調査等、適切な顧客対応の実施 
③ 営業優先ではなく、コンプライアンス・顧客保護を重視する健全な組織風土の醸成
④ 適切な募集管理・引受管理態勢の確立(代理店に対する十分な牽制機能の構築を含む)
⑤ 適切な商品開発管理態勢の確立
 (2)上記(1)に係る業務の改善計画を令和5年3月31日(金曜)までに提出し、ただちに実行すること。

(3)上記(2)の改善計画について、当該計画の実施完了までの間、3カ月毎の進捗及び改善状況を翌月15日までに報告すること(初回報告基準日を令和5年5月末とする)。

2.処分の理由   当庁検査及び保険業法第128条第1項に基づく当社からの報告の結果、以下の問題が認められた。
(1)経営管理態勢及び業務運営態勢の適切性
当社は、中小企業向けの生命保険商品の販売に特化したビジネスを展開しており、事業保険の引受けを通じて、法人、経営者及び従業員等に対して経済的保障を提供し、個人生活や企業経営の安定を支えることを使命として掲げている。
しかしながら、取締役会等は、それを実現するための経営管理(ガバナンス)態勢及び業務運営態勢を適切に整備・構築しておらず、社内では、営業を優先してコンプライアンスや内部監査を軽視する企業文化・風土が醸成され、その結果、節税(課税の繰り延べ)を訴求した不適切な商品開発・保険募集が推進される事態を招いている。
(2)保険本来の趣旨を逸脱した商品開発及び保険募集
当庁では、令和元年2月の国税庁による法人税基本通達の改正に係る保険業界への周知以降、累次にわたり保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動を行わないよう注意喚起を行っているほか、同年10月に、「保険会社向けの総合的な監督指針」(以下、「監督指針」という。)の一部を改正し、法人等向け保険商品の設計上の留意点として、「保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動につながる商品内容となっていないか」という観点を明確化し、節税(課税の繰り延べ)を訴求した商品開発を含め、同活動を防止するための指針を示している。  しかしながら、当社は、こうした状況を認識しつつ、名義変更による法人から個人(経営者等)への資産移転を用いた節税ニーズに応えるために、低解約返戻金型の法人向け商品を開発していく方針を商品委員会の資料に明示的に記載して、経営陣の関与の下、組織的に開発・販売を決定するといった悪質性の高い事例が認められた。  また、上記の注意喚起や監督指針の一部改正後も、本社営業推進部門が全国の営業拠点に対して、税務上の損金計上を訴求した不適切な保険募集に繋がりかねない営業推進活動(営業ツールや研修ツールの提供等)を組織的・恒常的に行っている実態も認められた。
(3)3線管理態勢の整備・確立
当社は、第1線から第3線の各層において基本的な態勢を整備しておらず、以下のとおり、多くの問題点が認められた。
 ①保険募集・引受管理態勢(第1線)
保険募集管理部門である営業管理部は、十分な人員が配置されていない中、節税を過度に強調した保険募集の防止策が実際に機能しているかの確認や、追加施策の検討を実施していない。その結果、当社の営業拠点・保険代理店では、社内ルールに反して私製の募集文書を用いた募集などが広く行われている実態が認められた。  また、引受審査を所管する契約部は、企業が保険契約者及び保険金受取人となり、従業員を被保険者とする事業保険の引受にあたって、従業員の遺族への弔慰金等の支払い財源確保という企業の保険加入の目的と保障内容が整合的かといった確認を行っていないなど、事業保険の引受審査に関して適切な確認・判断を行う態勢となっていない。
 ②法令等遵守態勢(第2線)
取締役会は、当社における法令等遵守態勢を構築する上で基本となる方針を策定していない。また、コンプライアンス部は、当社にとって最も重要なコンプライアンスリスクである「保険本来の趣旨を逸脱するような募集活動」に関するリスクへの対処をコンプライアンス・プログラムに掲げておらず、本社各部署・各営業拠点が自律的・計画的な法令等遵守の推進に取り組むことについて指示を行っていないなど、法令等遵守態勢の実効性が確保されていない。
 ③内部監査態勢(第3線)
監査部は、前述の監督指針の一部改正といった外部環境の変化等をリスク・アセスメントにおいて洗い出しておらず、こうした募集活動を防止するために必要な態勢整備や内部統制の十分性等を監査していない。  また、営業拠点・保険代理店における保険募集管理態勢の妥当性・有効性等については、コンプライアンス管理部が検査により確認・評価しているが、営業現場の実態が十分に把握できていないにもかかわらず、監査部は、検査結果の報告を形式的に受領するにとどまり、検査の実効性等について評価を行っていない。
(4)自主的な改善に向けた評価
当庁からの保険業法第128条第1項に基づく報告徴求命令において、上記(1)~(3)のような保険募集の実態に係る調査結果や態勢上の問題点が適切に報告されておらず、当社における自主的な改善は十分に期待できない。
以上より、当社の確実な業務改善計画の実施及び定着を図っていくためには当局の関与が必要と判断し、業務改善命令を発出した。
お問い合わせ先

金融庁 監督局 保険課
Tel 03-3506-6000(代表)(内線2334、3344)

https://www.fsa.go.jp/news/r4/hoken/20230217/20230217-1.html

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