金融庁「株式会社東京証券取引所及び株式会社日本取引所グループに対する行政処分について」を公表しました。

金融庁「株式会社東京証券取引所及び株式会社日本取引所グループに対する行政処分について」を公表しました。

令和2年11月30日
金融庁

株式会社東京証券取引所及び株式会社日本取引所グループに対する行政処分について

本年10月1日、株式会社東京証券取引所(以下、「東証」という。)の売買システムにおいて障害が発生した。これを契機として、東証の全ての取引の開始が不可能となり、その後も取引が再開できないまま、終日、全面的に停止した。
 東証においては、平成30年10月のシステム障害の発生を契機に各種の対応策を講じてきたにもかかわらず、再びシステム障害が発生し、取引開始から取引時間が終了するまでの間、全ての取引が停止に至ったことは、金融商品取引所に対する投資者等の信頼を著しく損なうものであると認められる。
 本件に関し、東証に対しては、発生原因等について、また、東証の親会社である株式会社日本取引所グループ(以下、「JPX」という。)に対しては、グループ全体のシステムの信頼性向上に対する認識、課題及びその解決に向けた対応の方針について、本年10月2日付で報告書の提出を求め、同月16日、東証及びJPXより金融庁に対し報告がなされた。
 金融庁では当該報告及びその後の立入検査等を通じて発生原因等を確認したところ、本件事案は、直接的には、障害が発生した機器の製品上の不具合が原因となって発生したものであるが、障害が発生した機器の自動切替え機能の設定に不備があったことや、売買再開に係る東証のルールが十分でなかったことなどが認められた。
 以上のことから、本日、東証及びJPXに対し、以下の行政処分を行った。

I.株式会社東京証券取引所に対する業務改善命令(金融商品取引法第153条前段)

1.以下の(1)~(4)の事項を含め、東証が本件事案等を踏まえて本年10月16日までに報告した各種の再発防止策及びその後に策定した再発防止策に関し、その内容及びこれらを実施するスケジュールなどについて、あらためて報告のうえ、迅速かつ確実に実施すること。

(1)東証と業務委託先は、システムの仕様と機器の製造元から提供されたマニュアルとが相違していたために機器の故障時に別系統への自動切り替えが行われない設定となっていたことを把握していなかった。
 このため、東証は、既存の機器設定の再確認や更なる手動切替え手順の確認などにより機器の故障時に確実かつ迅速に別系統への切り替えができる方策に取り組むことは当然として、システムにおいて使用する機器等に仕様変更が行われた際の確認プロセスを見直すこと(業務委託先に対し見直しを求めることを含む。)。

(2)売買を通常の方法で停止させるために複数の手段を準備していたが、いずれも故障が発生した機器の正常稼働を前提としていたため、通常の方法によらずに売買を停止せざるを得なかったことが当日中の売買再開の大きな支障となった。
 このため、東証は、今回障害の発生した機器に依存しない売買停止機能を開発することは当然として、システム内の依存関係全般について点検を行い、取引の継続に重要な役割を果たす機能については特定箇所の故障が当該機能の停止に及ばないようにするための方策に取り組むこと。

(3)これまで、通常の方法によらない形で売買停止に至った場合においては、当日中に売買を再開するとの事態を十分に想定していなかったため、東証と取引参加者との間で障害発生時に注文受付を制限するルールや売買停止までに受け付けた注文の取扱いについてのルールが未整備であった。 
 この結果、取引参加者においては、システム対応や顧客対応に係る態勢整備が不十分となっておりテストや訓練なども行われていなかった。
 また、売買再開に係る明確なルールが定められていなかったことも障害発生当日中の売買を再開することの大きな支障となった。
 このため、東証は、投資者等の保護や利便性の確保、安定した市場運営など取引所の果たすべき役割に関する様々な観点を踏まえ、通常の方法によらずに売買停止を行うケースも想定し、明確で実効的な注文の受付停止ルールや売買再開ルールの整備を行い、取引参加者も含めたテストや訓練を実施すること。

(4)本年10月16日に東証より受けた報告において、東証はシステムの開発・維持に関する基本的な考え方について、これまでの「ネバーストップ」をスローガンとする信頼性向上の取り組みに加え、今後は「レジリエンス」(障害回復力)向上のための迅速かつ適切な回復策を拡充することとしている。
 こうした基本的な考え方の見直しを踏まえ、取り組むべき施策の洗い出しを行い、必要な対応を実施すること。

2.東証は、障害により取引が開始できず、その後も当日中に取引が再開できなかったことにより投資者等の信頼を著しく損なったことを踏まえ、市場開設者としての責任の所在の明確化を図ること。

3.上記1.2.について、定期的に報告すること。

II.株式会社日本取引所グループに対する業務改善命令(金融商品取引法第106条の28第1項)

1.以下の(1)から(3)までの事項を含め、JPXが本件障害事案等を踏まえて本年10月16日までに報告した各種の再発防止策及びその後に策定した再発防止策に関し、その内容及びこれらを実施するスケジュールなどについて、あらためて報告のうえ、迅速かつ確実に実施すること。

(1)東証において、売買システムの機器の故障時に別系統への自動切り替えが行われない可能性や正常に売買停止ができない可能性を踏まえた対応が行われていなかった。
 このため、東証はもちろんのこと、株式会社大阪取引所(以下、「大取」という。)など各社において、システム障害の発生時にその影響を極小化する観点からシステムの総点検及び早期復旧に向けた訓練を行わせること。

(2)東証において、市場運営者として、取引参加者をはじめとする市場関係者との間で十分にコミュニケーションをとり、あらかじめ合意したルールに基づき障害発生当日中の売買再開に関する意思決定を行うことができなかった。 
 このため、東証はもちろんのこと、大取など各取引所において、取引参加者も含めた売買再開に係るルールを整備させること。

(3)東証におけるシステムの開発・維持に関する基本的な考え方については、これまでは「ネバーストップ」をスローガンとする信頼性向上が中心に置かれており、これと比べて「レジリエンス」(障害回復力)向上の取組みが遅れていた。
 今般、東証は、「ネバーストップ」をスローガンとする信頼性向上策に加え、「レジリエンス」向上のための迅速かつ適切な回復策を拡充することとしている。
 これを踏まえ、東証はもちろんのこと、大取など各社におけるシステムの開発・維持に関する基本的な考え方について見直しを行わせ、「レジリエンス」の向上を図ること。

2.JPXの子会社である東証において、障害により取引が開始できず、その後も当日中に取引が再開できなかった。その結果、投資者等の信頼を著しく損なったことを踏まえ、子会社である取引所の管理に係る責任の所在の明確化を図ること。

3.上記1.2.について、定期的に報告すること。

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
企画市場局市場課市場業務室(内線3612)

https://www.fsa.go.jp/news/r2/shouken/20201130-1.html

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